白と黒のあいだにある、500色の「彩り」

「休みたい」

たったその一言が、言えない娘。

弟に反応して、咳き込んでみたり、
何度も熱を測ってみたり。

休みたいと言えない代わりの
自分を守るためで、
誰にも否定されない理由たち。

「学校に行けるようになったら、私も安心なのに」

そんなわたしの思いは、
まだ心の中に居座っている。

彼女が学校に行けないことと
私の揺れは別々の問題だと分かっていても、

わたしの揺れが娘に影響しているのかもと
自分を責めそうにもなる。

わかってる。

行きたいと思えないのは、
どこにいても、何をしても、
ただ安心な場所を探しているだけなんだってことを。

それでも『行きたくないのなら、もうずっと行かなくていい』
と行かせたいだけの思いが言葉に乗ってしまう。

彼女を追い詰めた後に襲ってきた自責の念。

腹を括るなんて、そんな立派な覚悟じゃない。

娘を、そして自分を説得させるための「理由」が欲しくて、
わたしも、もがいていた。

この『今』という時間は
わたしと彼女にとってどんな意味があるのだろう。

迷い、言葉に詰まりながら、絞り出した。

『熱があっても、なくても、
 理由がなくても
 行きたくないと思うなら、
 行かなくていい』

『学校に行っても、行かなくても、
 大好きだよ』

何を選んでも、どんなことがあっても
彼女の味方でいたい、守りたい。

ふと、思い出した500色の色鉛筆。

独身の頃、病気で入院しているこどもたちと、
わが子を思って流すお母さんたちの涙に、

共感しようにもその当時の私の器では
到底寄り添いようもなく
無力さを感じていたわたしが、

「いつか守る命ができたら、  
 その子は何を描くのだろう」
と、淡い夢を抱いて集めたもの。

クローゼットから引っ張り出し、
ひさしぶりに抱えたその箱はずっしり重く、
でも彼女の反応にわくわくした。

今日も行かなくていいんだと
安心した表情の彼女に手渡す。

「わぁ!」 目はまんまるに、キラキラさせて。
緑だけで17色。
一つひとつに名前がついている。

学校に行くことが白で、
学校に行かないことは黒なのだろうか。

2色のどちらかを選ぼうとしていた私。

行きたい気持ち、行きたくない気持ち。
そこにある、言葉にならないたくさんの理由。

わたしたちの心には、もっといろんな色がある。

きれいな色も、
ぐちゃぐちゃな色も、
どんな色があっていい。

まっさらな「白」より、

『グラデーションの私でいい』

あなたの心や人生を500色で描くなら、何色ですか?

今のわたしは、

薄ピンクに春の薄雲のようなグレーが重なっている。

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